Learning from the classics, expressing the contemporaries, and deepening the plastic thinking in the process of drawing. Toshiaki Shibata is the sharp-eyed artist who pursues sophisticated figurative expression through capturing the essence of the figure.
2024
2023
2023./ acrylic on canvas, 273x220mm.(3F).
Private Collection, Japan.
名古屋での取材を基に描いた作品です。1930年、水位差のある堀川と中川運河を船で往来可能にするために、両運河を繋ぐ水路に作られた「松重閘門(まつしげこうもん)」という水門です。
「東洋のパナマ運河」と呼ばれていたそうで、東西2つの水門の間の閘室(こうしつ)に船を入れて扉を閉め、水位を調整してから反対側の門を開けて船を通していました。残念ながら現在は使用されておらず、閘室は埋め戻されています。
そして、「水上の貴婦人」と称された、この水門の鉄製扉を上下させるために両脇に建てられた美しい4つの尖塔は、文化財として保存されることになり現在に至ります。この絵は中川運河側の水門に建つ2つの尖塔になります。
このアングルは、資材や樹木で隠れて見えないところがあったので、下絵制作には時間がかかりました。また、手前の埋め戻された閘室部分にかつての水が入っている状態を想像で描いてみました。
この作品も、空の部分にマチエールをつけ、干渉色を使うことで、光の当たり方で色が変化して見える工夫を施しました。
2022
2022./ acrylic on canvas, 220x273mm (3F).
Private Collection, Japan.
This is the afternoon view of the Koremasa Bridge over the Tama River from the Inagi City side to the Fuchu City side. This summer I have been sketching in the heat.
Koremasa Bridge has always been my favorite because of its unique combination of girder bridge and cable-stayed bridge.
2021
2020
2020./ acrylic on canvas, 227x227mm.
One answer to the question of why I use acrylic paints is apparent in this work. That is because the technique of combining transparent and opaque expressions can be performed relatively quickly.
A still life depicts immovable objects, but the rhythm and movement come out depending on how the objects are assembled and how the colors and shapes are combined. Such a contradiction is what I cherish and is the concept of the work.
2020./ acrylic on canvas, 333x242mm (4F)
I used a technique of “drip and polish” with acrylic paints to create a fractal form, portrayed the concrete form by making use of the fractal form, and repeated further the “drip and polish”. My aim was to create a fusion of the accidental form derived from the technique and the impression of the portrait itself.
2020./ acrylic on canvas, 227x158mm.
Capturing the shape in terms of surface is a tradition of Western painting since Chiaroscuro. But if the shape is taken as a “color surrounded by lines,” I find it oriental. The lines I drew indicate the place where the shape changes, which are called ridgelines. By decomposing the shape into lines and colors, I am seeking a style of expression that combines an Oriental flatness with a Western three-dimensional effect.
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2011-2012
2012./ acrylic on canvas, 335x240mm (4F)
A human figure has always been the most important theme for me. I appreciate the encounters with excellent models that have bought my artistic standard to higher level.
The best effect from the technique of “analysis and synthesis of the colored regions” is that the conflict between colors and forms creates a new image. I think that value of colors and line-weight are important when creating such works.
2008-2010
2007
2006
2004-2005
2005./ acrylic on canvas,1940x2240mm
Exh. 2005. Gallery Bankaku, Nagoya.
2005. The Chubu-Sinseisaku Art Society Exhibition, Aichi Prefecture Museum of Art . (Received the Chubu-Shinseisaku Art Prize ).
2005. The Sinseisaku Art Society Exhibition, Tokyo Metropolitan Museumof Art.
2006. Gallery Miyuki, Tokyo.
Lit. 2005. Catalogue of The 68th Exhibition of SHINSEISAKU ,
2006.
中部新制作絵画展にて中部新制作賞受賞。
第69回新制作展入選作品(絵画部賞候補)。
2004./ acrylic and colour pencils on canvas,335x240mm.
Exh. 2004. Gallery Miyuki, Tokyo.
2005. Gallery Bankaku, Nagoya.
日本画家の佛淵静子氏と共に、同じモデルを使って描いた作品の二作目。前作の「face I」の、あまりにも安定感の強い感じが気になったので、今回は部分的に立体感を強め、平面化した部分との差をつけることで、不安定な緊張感を与えてみた。色調はほとんど同じだが、前作よりも配色を工夫し、コントラストを強く感じさせるようにしてみた。アクセルとブレーキを同時に踏んでいるような感覚が気に入っている。
2004./ acrylic and colour pencils on canvas,335x240mm.
Exh. 2004. Gallery Miyuki, Tokyo.
2005. Gallery Bankaku, Nagoya.
日本画家の佛淵静子氏から、私の生徒をデッサンしたい、という依頼があったので、私も一緒に描くことにした。二人とも丁度、同時期に個展をひかえており、同じモデルを使ってどう描くか、お互いに競ってみることにした。マチエールを下地段階から工夫し、「ネフスキー大通り I・II」よりも、さらに色調を抑えて、繊細な空気感を表現してみた。イメージとしては、すっかり色あせてしまった、板に描かれた古い大和絵の感じ。「二つの自画像と都市」時代の色調に、感覚的に戻ってきた部分もあると思う。もっとも、あの頃とは調子の使い方が全然違っているが。そういえば、最近ちょっと日本画っぽいテクスチャーを意識したりするのは、佛淵氏のせいかも知れない。
2003
2003./ acrylic on canvas,1620x1940mm
Exh. 2003. The Chubu-Sinseisaku Art Society Exhibition, Aichi Prefecture Museum of Art .
2003. The Sinseisaku Art Society Exhibition, Tokyo Metropolitan Museumof Art.
2004. Gallery Miyuki, Tokyo.
2005. Gallery Bankaku, Nagoya.
Lit. 2003. Catalogue of The 67th Exhibition of SHINSEISAKU , p.149
第67回新制作展入選作品。2002年のロシア・サンクトペテルブルグ訪問の際、ロシア美術館で観覧した、パーヴェル・フィローノフの代表作、『ペトログラード・プロレタリアート・フォーミュラ』から強い影響を受けた作品。作品左側周辺部に描かれた円や直線による分割は、まさにこの作品からサンプリングしたもの。右側のオレンジの色面上に赤い線で描かれた人物は、最初は左側と同じように細分化していく予定だったが、イタリアの画家、ロレンツォ・トルナボーニ風に仕上げた。
2003./ acrylic on canvas,1620x1940mm
Exh. 2004. Gallery Miyuki, Tokyo.
2004. The Chubu-Sinseisaku Art Society Exhibition, Aichi Prefecture Museum of Art .
2005. Gallery Bankaku, Nagoya.
Lit.
これまでの人物による構成は、ほとんどが着衣の女性であったが、今回は裸婦による構成を試みた。服の色がないことで、より厳しく面と稜線を追っていかないと、なかなかいい形にならない。今回は雑誌の写真を基にエレメントの形を起こしたが、次回はモデルを使って描こうと思った。使用した雑誌はPERFECT 10という洋書。人物の明暗が読める写真は輸入物のほうが多く掲載されているようだ。
2003./ acrylic on canvas,320x410mm.
Private Collection, Japan.
Exh. 2003. Gallery Bankaku, Nagoya.
2004. Gallery Miyuki, Tokyo.
サンクト・ペテルブルグ滞在時の取材をもとに制作した作品。左手の旧エルミタージュから正面のアーチ形の渡り廊下で右手のエルミタージュ劇場へとつながっている。その谷間に位置する冬運河はペテルブルグで最も短い運河であり、建物の陰影と射し込む光のコントラストが印象的な、私のお気に入りの場所の一つ。「グリボエードフ運河」と同じく、彩度を強め、透層部分を生かして仕上げた。少しくどくなったかも知れない、と思ったが、画廊で段々と見慣れてくるにつれ、程良く感じるようになった。
2003./ acrylic on canvas,320x410mm
Private Collection, Japan.
Exh. 2003. Gallery Bankaku, Nagoya.
2004. Gallery Miyuki, Tokyo.
Lit. 2004. “Gekkan Bjyutsu (Monthly Fine Art magazine)” No.343, April, p.186.
2004. “Bjyutsu no Mado (Window of Fine Arts)” No.247, April, p.267.
2002年5月、ロシアのサンクト・ペテルブルグで個展を開催する機会を得た。その滞在時の取材をもとに制作した。ペテルブルグのメインストリートであるネフスキー大通りを、滞在中に歩かない日はなかった。多くの美術館や歴史的建造物が建ち並ぶという理由もあるが、私はこの広くて真っすぐな道をとても気に入ってしまい、時間さえあれば散策していた。
2002
2002./ charcoal on MBM paper, 650x500mm.
Kake Museum of Art, Kurashiki, Okayama Prefecture.
Exh. 2005. Gallery Bankaku, Nagoya.
Lit. . .
このモデルさんは、日本画家の佛淵静子氏の高校時代の同級生であり、私の生徒でもある。以前から佛淵氏が彼女を描きたいと言っていたので、絵画教室がお休みの日に一緒に描いた。やはり、たまにはこういうデッサンをするといいなぁと思う。身体のひねりを示す服の皺をちょっと強調しすぎたかな、と思ったが、出来上がってみるとちょうどよかった気もする。服の下に隠れた、腰の構造感が若干弱いように思う。
2002./ acrylic on canvas,1620x1940mm
Exh. 2002. Gallery Miyuki, Tokyo.
2002. The Chubu-Sinseisaku Art Society Exhibition, Aichi Prefecture Museum of Art .
2002. The Sinseisaku Art Society Exhibition, Tokyo Metropolitan Museumof Art.
2003. Gallery Bankaku, Nagoya.
Lit. 2002. Catalogue of The 66th Exhibition of SHINSEISAKU , p.146
2003. “Gekkan Bjyutsu (Monthly Fine Art magazine)” February, p.176
第66回新制作展入選作品。三人の女性と大型客船、タグボートの写真の構成。電話をかける女性、本を読む女性は「cloud」や「腰掛ける女」と同じモデル。「smoke」もそうだが、ダブルイメージの複雑化は、鑑賞者の思考をフリーズさせる場合もある。思考を強制される作品は良い作品か否か、というのは専門家でも意見が分かれるようだ。例え思考をストップして観たとしても、感動するであろう作品を創ったフィローノフはあらためて凄いと思う。
2001
2001./ acrylic on canvas,1620x1940mm.
Kake Museum of Art, Kurashiki, Okayama Prefecture.
Exh. 2001. The Sinseisaku Art Society Exhibition, Tokyo Metropolitan Museumof Art.
2002. Gallery Miyuki, Tokyo.
2003. Gallery Bankaku, Nagoya.
Lit. 2001. Catalogue of The 65th Exhibition of SHINSEISAKU , p.146
2003. Issues and Researches in Art Education No.8/2002, p.96
2004. Catalogue of The Exhibition of Gallery Bankaku, 2003, p.3
煙草を吸う女性の顔と1940年代のプロペラ旅客機から降りてくる人々の写真の構成。これまでの人物のみの構成から、さらに風景を重ねてダブルイメージを複雑にした。
この作品の完成後、ニューヨークで旅客機による同時多発テロ事件が発生した。発表が事件の直後であったため、事件をイメージして描いた作品だと誤解されることが多くて困った。
2001./ acrylic on canvas,1620x1940mm
Exh. 2002. Gallery Miyuki, Tokyo.
2002. The Chubu-Sinseisaku Art Society Exhibition, Aichi Prefecture Museum of Art .
2003. Gallery Bankaku, Nagoya.
Lit. 2003. The Asahi Shimbun ( Nagoya ), February 6, an evening edition, p.4.
2003. nikkei healthcare, may 2003, cover page
同一のモデルを構成。背景の雲はダブルイメージにしなかった。いつもと比べて重なった部分が少ないのは、モデル女性像の形態イメージをある程度保ちたかったからである。パール顔料の絵の具をこれまでとは違った使い方をしてみた。
2001./ acrylic on canvas,455x380mm
Parker Collection, UK.
Exh. 2001. Gallery Bankaku, Nagoya.
2002. Gallery Miyuki, Tokyo.
写生したデッサンを基に構成した作品。制作してみて意外だったのは、写真を使用しているときほど、ディティールを気にしないで描けたこと。実際に見ている方が、形態を把握しているわけだから、当然なのかも知れないが、細部も同様に把握しているのだから、どうしてなんだろうと思った。恐らく、写真だけだと形態感に今ひとつ自信が持てないため、ディティールを追う方向に流れやすいのだろう。「直観とは無意識的な、分析による理解である。」という、フィローノフの言葉を思い出した。<
2000
2001./ pencil on paper,455x380mm
Parker Collection, UK.
Exh. 2001. Gallery Bankaku, Nagoya.
2002. Gallery Miyuki, Tokyo.
鉛筆デッサン。ずっと写真から構成要素のドローイングをおこすやり方に慣れてきているため、年に数回、モデルを呼んでデッサンする機会をつくるようにしている。この時は、特にお気に入りのモデルということもあって、たまには写生したデッサンを構成したタブローを制作しようと計画していた。ところが、実際にモデルをデッサンすると、その後のタブローのことなどどこかへ行ってしまって、デッサンすることに夢中になってしまっていた。ポーズ時間が終了して思ったこと。「もっと上手くなりたい。」
2000./ acrylic on canvas,1620x1940mm.
Exh. 2000. The Sinseisaku Art Society Exhibition, Tokyo Metropolitan Museumof Art.
2001. Gallery Bankaku, Nagoya.
Lit. 2000. Catalogue of The 64th Exhibition of SHINSEISAKU, p.145
2001. The Nagoya Times, February 16. p.4
2002. Catalogue of The Exhibition of Gallery Bankaku, 2001, p.3
構成、特に構図において、十分に工夫できた作品。ここ近年のコンセプトである、「造形性の追究」が最も成功した作品と思う。この構図が出来たとき、真っ先にエイゼンシュテインの「戦艦ポチョムキン」のラストシーンを思い浮かべた。
1998-1999
1999./ acrylic on canvas, 530x455mm.
Private Collection, Japan.
Exh. 2000. Gallery Miyuki, Tokyo.
2001. Gallery Bankaku, Nagoya.
2002. “Navicula Artis” Gallery, St.-Petersburg.
Lit. 2002. “Peterburg na Nevskom” ( Russia ), No.5 (64), may – june 2002, p.4
イタリア版”VOGUE”に掲載されていた、レプリカント風の女性モデルに惹きつけられ、引用した、「実験」シリーズ。「operation」も含め、このシリーズは従来の都会的イメージに加え、未来的イメージが気に入っている。パールの光り具合が今までより強くなるように下地を暗めにしている。
1999./ acrylic on canvas,1940x1620mm.
Kake Museum of Art, Kurashiki, Okayama Prefecture.
Exh. 1999. The Sinseisaku Art Society Exhibition, Tokyo Metropolitan Museum of Art.
Lit. 1999. Catalogue of The 63rd Exhibition of SHINSEISAKU, p.135
1999年第63回新制作展入選作品。イタリア版”VOGUE”に掲載されていた、レプリカント風の女性モデル(向かって左側の女性)に惹きつけられ、引用した「実験」シリーズ。同じシリーズである、前年制作の「operation」に比べると、構成が複雑になり、絵の具の厚みが増し、完成度も高くなった。しかし、「operation」の単純だが強い構図に比べ、今ひとつ気に入らない。構図、構成が少しでも気になるときは、時間を気にして先に進んではいけないんだと思った。
1999./ acrylic on canvas,605x500mm.
Private Collection, Japan.
Exh. 2000. Gallery Miyuki, Tokyo.
ファッション雑誌で見つけた数枚のローアングル構図のモデル写真に惹かれ、構成要素に使おうとドローイングした。その時使用した数枚の写真の中でも特にこの人物の顔は気に入らないものであった。しかし、ドローイングが出来上がると、写真で見たときと印象が全く変わって、まず、これを使いたくなってしまった。風景と空はローアングルを際立たせるためにパースを合わせた。当初の狙いとしては、同じエレメントを三つダブらせて軽快なイメージを作りたかったが、結構重たくなってしまった気がする。しかし、人物に色面分割が集中し、背景がスッキリ見える対比が効いており、良い作品になったと思っている。背景の空の部分は、下地に使用したモデリングペーストを塗った際に木櫛でマチエールをつけたので、パールの光り方が面白い。この工夫は結構気に入っていたのに、ある画商に「古い作品の背景を塗りつぶしたような作品」と評されたのには驚いた。今はこの画商とお付き合いしていない。
1999./ acrylic on canvas,455x380mm.
Private Collection, Japan.
Exh. 1999. Fine Art Department Gallery, Sakae Store, Nagoya Mitsukoshi,Ltd.,Nagoya.
2000. Gallery Miyuki, Tokyo.
市松模様の布のこのモチーフは、自分が教えている都内のカルチャースクールの教室で、生徒用に私が組んだもののひとつである。このとき気に入って自分で描きたくなってしまったので、写真を撮って持ち帰り、描いた作品。手前の林檎をあえて切り、モチーフの上部を空けるという構図は、この作品の持つ独特の雰囲気に貢献していると思うが、教室では生徒に薦めないなぁ、と完成したときに思った。
1998./ acrylic on canvas,1940x1620mm.
Exh. 1998. The Sinseisaku Art Society Exhibition, Tokyo Metropolitan Museum of Art.
2000. Gallery Miyuki, Tokyo.
Lit. 1998. Catalogue of The 62nd Exhibition of SHINSEISAKU, p.151
2000. Issues and Researches in Art Education No.5 / 1999, p.75
1998年第62回新制作展入選作品。機械を操作する女性のイメージを回転椅子を軸に反転させたシンメトリックな構成。背景の機械を人物と重ねた処理が、これまでの作品にはみられない要素である。
1995-1997
1997./ acrylic on canvas,605x725mm.
Private Collection, Japan.
Exh. 1997. Fine Art Department Gallery, Toyoko Store, Shibuya Tokyu, Ltd.,Tokyo.
「若者と街」とこの作品「afternoon」は、制作にあたって、作家として最も満足のいく終わり方をした作品である。その時の自分の実力を120パーセント出せたということだ。仕上がりに近づく頃のじわじわと沸き上がるような昂揚感が忘れられない。
この作品は、形態と構成に関しては明確な下絵を制作し、ほぼ最初の狙い通りに仕上がった。この頃から背景にパールの入った絵具を使用するようになった。自然光が当たると非常に美しく見える。
1997./ acrylic on canvas,910x1165mm
Nagakute Senior High School of Aichi Prefecture.
Exh. 1997. Kouji Suganuma & Toshiaki Shibata Exhibition, Miki Gallery, Tokyo.
Lit. 1997. Bulletin Nagakute no.61 ( July 16, 1997 ), p.1
昨年暮れに卒業記念品として作品買い上げのお話を頂いてから制作に入ったわけですが,3カ月というのは私にとって随分長く,そして短い時間でした。作品のイメージや大きさを指定されてからの制作は,私にとって初めての経験でしたし,2月の博士課程研究発表展(個展)を控え,忙しい時期でもあり,思いの外時間がかかってしまいました。納期をひと月も延ばして頂いた訳ですが,正直なところ3月上旬までは過去の作品の方が良いのではないか,とすら思えた程,作品の出来が気に入りませんでした。何度も下絵や構図を変更し,キャンヴァス上での試行錯誤が続きました。3月の下旬にやっとトンネルを抜け,最後にはとりあえず今の自分の一番の作品と思えるようになり,筆を置くことが出来ました。「芸術の境に停滞ということはない。進歩しなければ必ず退歩するのだ。」芥川龍之介のこの言葉が,少し理解できたような気がします。(広報「長久手」61号より)
1995./ acrylic on canvas,1940x1305mm
Toshiaki Shibata Collection, Japan.
Exh. 1996. The Chubu-Sinseisaku Art Society Exhibition, Aichi Prefecture Museum of Art.
1997. The Museum of Tokyo National University of Fine Arts and Music.
Lit. 1997. Catalogue of The Toshiaki Shibata’s Exhibition of the Doctor Course at Tokyo National University of Fine Arts and Music, p.4.
1996./ acrylic on canvas,2610x1620mm
Toshiaki Shibata Collection, Japan.
Exh. 1996. 1996.The Sinseisaku Art Society Exhibition, Tokyo Metropolitan Museum of Art.
1997. The Museum of Tokyo National University of Fine Arts and Music.
Lit. 1996. Catalogue of The 60th Anniversary Exhibition of SHINSEISAKU ,p.137.
1997. Catalogue of The Toshiaki Shibata’s Exhibition of the Doctor Course at Tokyo National University of Fine Arts and Music, p.3.
1995./ acrylic on canvas,1940x1305mm
Toshiaki Shibata Collection, Japan.
Exh. 1995. he Sinseisaku Art Society Exhibition, Tokyo Metropolitan Museum of Art.
1997. The Museum of Tokyo National University of Fine Arts and Music.
Lit. 1995. Catalogue of The 59th Exhibition of SHINSEISAKU , p.137.
1997. Catalogue of The Toshiaki Shibata’s Exhibition of the Doctor Course at Tokyo National University of Fine Arts and Music, p.4.
この作品で、位相、転位というコンセプトを、ようやく形にすることが出来たと思った。しかし、これまでの重たいイメージの「フラクタル絵画」から、突然変化したため、「軽くなった」という批判も浴びた。当時の時流としては、世紀末的な暗い絵画が流行していたにもかかわらず、ソフィスティケートされた都会的美意識を追究するコンセプトにシフトしていった。まず、構成要素である人物は”VOGUE”など、外国のファッション誌から引用、明度分解したドローイングを再構成し、色面化してゆく。テーマにこれまでのような物語性は持たせない。複合的な視覚表現として、形態を重層的にあらわし、重なって生み出された形は重ならない形と等価に扱い、「造形性の追究」を第一に考えるようになっていった。
1993-1994
1994./ acrylic on canvas,1165x910mm.
Private Collection, Japan.
Exh. 1995. The Showa-kai Prize Exhibition, Galerie Nichido, Tokyo, Nagoya, Osaka.
1995. Fine Art Department Gallery, Hoshigaoka Store, Nagoya Mitsukoshi, Ltd., Nagoya.
Lit. 1995. Catalogue of The 30th Showa-kai Prize Exhibition, p.18
1995年第30回昭和会展出品作品。個人蔵。形態を重ねることで生まれる新たなイメージの創出を目指した最初の作品。この作品のタイトルは、その後の制作の指針となった。明暗を基準におこなわれる色面分割が、他の形と重ねられることによって、立体感や空間感を失い、図形としてのイメージになっていくさまがトポロジー的であったことから、このタイトルとなった。
1994./ acrylic and oil on canvas,2330x1820mm
Exh. 1995. The Chubu-Sinseisaku Art Society Exhibition, Aichi Prefecture Museum of Art ( Won the Prize for New Face ).
1997. The Museum of Tokyo National University of Fine Arts and Music.
2002. “Navicula Artis” Gallery, St.-Petersburg.
Lit. 1995. The Chunichi Shimbun, May 12, p.11.
1997. Catalogue of The Toshiaki Shibata’s Exhibition of the Doctor Course at Tokyo National University of Fine Arts and Music, p.5.
1994年、フィローノフの絵画理論研究を修士論文とした直後の作品。フィローノフ作品「二つの顔(1925)」、「頭部(1925)」に強く影響を受けた。構成された人物や都会が、全体でひとつの顔になるようなイメージで制作した。下地はアクリルだが、かなり早い段階で油彩に切り替えて制作した。この頃はまだ、明確な下絵を作らないで、キャンバス上で試行錯誤しながら画面構成をしていたため、非常に時間がかかっていた。
この作品の完成後、神戸に震災が起こる。発表が震災後であったため、「壊れた都会の風景」や「不安な人物像」が震災をイメージしたものか、という質問を多くうけた。中部新制作絵画展にて新人賞受賞。
1992
1992./ acrylic on canvas,410x320mm
Private Collection, Japan.
Exh. 1992. Gallery “Boku-no kusou Bijutukan”, Tokyo.
1995. Fine Art Department Gallery, Hoshigaoka Store, Nagoya Mitsukoshi, Ltd., Nagoya.
1992年個展(ぼくの空想美術館・東京)出品作品。個人蔵。「フラクタル絵画」時代の作品。削りだした偶発形態と筆で描き加えた形が程良いバランスで終えられた。モデルは実在するものの、手はレオナルド作品「白貂を抱く貴婦人」からの引用。
1990-1991
1991./ acrylic on canvas,910x725mm
The Museum of Tokyo National University of Fine Arts and Mudic, Japan.
Exh. 1992. Gallery “Boku-no kusou Bijutukan”, Tokyo.
1997. The Museum of Tokyo National University of Fine Arts and Music.
色彩と形態のコンフリクトから生み出される新たなイメージ,それがこれまでの「色面分解・統合」の最も優れた点であると考える.しかし,新たな問題点として,二次元的イメージが強くなり,空間性が単調にみえるという欠点があらわれた.また,分解によって密度性は増すが,いわゆるデジタルイメージが強調され,「有機的」な,生き生きとしたイメージ,生命感が損なわれてしまうのである.空間性の克服のために用いた手段として,いわゆる線遠近法的空間表現を用いず,色面性を生かす意味で,大和絵的な空間表現を研究した.「ふたつの自画像と都市」のような,異なる要素の結合,例えば自画像ふたつと俯瞰した都市風景,が生み出す「超」空間性は,作品のコンセプト,内容に対して決定的イメージを与えてしまうため,今後,より入念なエスキース作りが必要となってくる.色彩や形態の工夫といった,描画の段階以前の時間を長くとるようになってゆく.(制作ノートより)
1991./ acrylic on canvas,1620x1305mm
Exh. 1991. Ginza 9-bidou Gallery, Tokyo.
1991. The Sinseisaku Art Society Exhibition,Tokyo Metropolitan Museum of Art.
この作品は、造形大卒業制作展に出品した同タイトルの作品を、その後一年近く手を加え、改作したものである。自分自身と、思い入れのある人物像を構成したもの。卒業制作時は未完成であるばかりでなく、気に入らない作品であったが、良い作品に生まれ変わった。上手く行かなかった作品を手を加えることで、良くなったことは少ない上に、新制作展の初入選作でもあるため、この作品は深く思い出に残っている。
1987-1989
1989./ acrylic on canvas,910x725mm
Exh. 1989. Miki Gallery, Tokyo
1989年、初個展出品作は、この作品を含む7作品で、すべて30号の自画像。この時、私は東京造形大の4年生在学中、22歳で、卒業制作も含め、一年間自画像ばかり描いていた気がする。写真のソラリゼーション効果のように、人物の一部が背景と同色になっているようなイメージを考え、同時にアクリル絵の具の浅い色味を生かす意味で、色面分割を強調する赤い線を入れた最初の作品。タイトルは、自画像ばかり描いている私に対して、「ナルシスト?」と、冷やかし混じりのコメントをされることに対しての逆説的な回答としてつけたもの。
1987./ acrylic and oil on canvas,1620x1305mm
Exh. 1989. Four Artists Exhibition, Gallery House, Nagoya.
2002. “Navicula Artis” Gallery, St.-Petersburg.
Lit. 2002. Gazeta “Na dne” ( Russia ), No.14 (139), 27 may – 2 june 2002, p.8
この時期の作品は,アクリル樹脂絵の具で下地を施し,テンペラ(卵もしくはカゼイン)で中間層を造り,油彩で仕上げるという手の込んだ作業をしていた.水性地のキャンバスに,主にモデリングペーストで厚く塗られたアクリル下地が強く食いつき,上層の油彩を吸い込む構造になっているため,「乾いた画面」を造ることに成功している.この当時,素材的・技術的にイタリア・ルネサンスの壁画,主にボッティチェルリのフレスコ画に強く惹かれていた.そのため,その乾性の画面を目指していたのである.(制作ノートより)
20歳の時の作品。中央に自画像を配置、人物のポーズはミケランジェロのシスティーナ礼拝堂天井画からの引用である。背景の赤い旗は、制作途中に旧ソヴェートに旅行、当時革命70周年を祝うイベントで盛り上がる街の様子にインスパイアされ、帰国後に描き加えたもの。