Learning from the classics, expressing the contemporaries, and deepening the plastic thinking in the process of drawing. Toshiaki Shibata is the sharp-eyed artist who pursues sophisticated figurative expression through capturing the essence of the figure.
2019.10.22
「反アカデミズム」という言葉
アカデミズム 〖academism〗
①学問研究や芸術の創作において、純粋に真理や美を追究する態度。
②伝統的・保守的な立場を固持しようとする学風。官学風の学問的態度。(大辞林より)
さて、美術界における「反アカデミズム」とは、上記の①と②のどちらを批判する姿勢でしょうか?
かつての「反アカデミズム」は「反権威主義」でした。上記の②を批判する立場です。戦前の「官展」を中心に既得権益を守る姿勢では真の芸術は生まれない、という純粋な思いと、戦争へ協力せざるを得ない当時の「芸術統制」に反対する意味合いもあったでしょう。テーマや画風は自由であるべきだという思いがありました。
現在は「アカデミックな雰囲気がある(実力のある)作家・作品を排除する」という意味です。例えば、「デッサン力のある具象系洋画家」はこの批判の対象になります。つまり、上記の①を批判する立場に転向したわけです。
かつての官展の「新しい芸術を受け入れない」姿勢の根本には、美術界における「ヒエラルキー」や、「権益」を守るという誰もが知っている裏事情がありました。今日の公募団体の多くは、こうした戦前の官展の姿勢に反発して立ち上げられたものが多いのですが、残念なことに現在それらの団体の一番の問題は、「反アカデミズム」を標榜しつつ、その解釈を変えて、かつての官展と同じように、団体の「ヒエラルキー」と「権益」を守ろうとしていることにあります。
現在の公募団体の「守るべき権益」とは何か、についてはここでは省きますが、様々な事情から、作品の評価に専門的造形力を含めにくくなってしまった、ということではないでしょうか。
言葉の意味は時代と共に変わっていくことがあることは承知していますが、上記の例はどちらかといえば保身のためのすり替えに思えます。それは結果的に公募団体そのものの寿命を縮めることになるでしょうし、ひいては美術界の発展を阻害することになりかねません。現在の公募団体が長い年月を経て「官展化」したと思いたくはありませんので、是非、自浄作用を期待したいと思います。